すまい

犬と猫との住まいの工夫 第2回 狭小住宅のアイディア


第1回 「住宅密集地に建つ狭小住宅」から引き続き、犬と猫と暮らす我が家に取り入れた工夫やアイディアを紹介します。

 玄関とつながる犬猫のスペース

犬や猫と暮す家の計画の最大の悩みは、彼らのトイレの置き場所と犬の場合は散歩から帰った際の足を洗う場所と、シャンプーやグルーミングをどこでするのかが挙げられます。

《 我が家の玄関 》 壁や仕切りをなくし、部屋と一体となったスペースになっています

玄関扉は、子扉付きのガラスのはめ込み扉にして、あまり採光の望めない1階に光を取り込み、視界の広がりをもたせる窓のような役割も持たせました。
外からの視線に関しては扉を直接道路に面して設けず、玄関の前のアルコーブを介してクランク(雁行)させているので、外から中が丸見えということはありません。

時には、
扉を開放してアルコーブのデッキと玄関を一体的に使ったり、
アコーディオンカーテンを閉じて風を通したり、
夜はブラインドを下ろせるようにしたり、
など、状況に応じて変化できる玄関となっています。


【 玄関扉の工夫 】
(写真左)開放した玄関扉
(写真中)アコーディオン網戸を閉じる
(写真右)ブラインドを閉じる

そして、「犬猫のトイレスペース」「犬の足洗い場」をひとつづきになった玄関ゾーンに集約しました。
「スキップフロア」(※1)で、半階分高さがあがっているリビング。
そのリビングの床下を利用した収納スペースの一部を「犬猫のトイレスペース」に、その横の階段下に「犬の足洗い場」を設けコンパクトにまとめています。

** 住まいの工夫ポイント **
・玄関から直結なので、散歩から帰って靴をはいたままで足洗いができ、導線がスムーズになる。
・トイレスペース内部の高さは1mほどしかありませんが、犬猫にとってはそれで十分。狭い家ならではのスペース有効活用術。

【 トイレスペースと足洗い場 】
普段は扉を閉めて目立たなくしており、犬猫たちはシンク側の「ほこら」から出入りをしている

(写真左)階段下スペースの足洗い場 (右)トイレスペースの扉を開けると犬と猫のトイレが並ぶ

 犬のエリアと猫のエリア

先代犬ミニチュアシュナウザーのルッコラは、家の中では完全フリーで自由に動き回り過ごしていました。
時間帯やその日の天候によって、一番居心地のよい場所で過ごす気ままなところは、猫のくろちゃんを見て育ったからなのかもしれません。
そんなルッコラとくろちゃんは、特に「住み分け」をすることもなく、仲良く共存していました。

ただ、食事のスペースは、分ける必要がありました。
猫のくろちゃんの食事スペースは、キッチンの内部にあります。ルッコラが、くろちゃんの食べ残しのごはんを食べないように市販のフェンスで仕切っていましたが、自力でこじ開けて食べてしまうようになりました。
そこで、ちょっと知恵をしぼり、自作のフェンスを作ることにしました。

《 我が家のキッチンフェンス 》
** 理想とする条件 **
・ルッコラが、絶対こじ開けられない。
・使わないときは邪魔にならない。
・高さは、くろちゃんと我々が楽にまたげるもの。

そして、出来上がったフェンスがこちらです↓

【 キッチンフェンス 】
(写真左) 使わないときは袖壁に沿って自立する
(中) 使うときは上に持ち上げ、ぐるりと回転
(右) キッチンフェンスとなり、ルッコラが飛び越えられず我々はまたげる高さ

キッチンフェンスは、左の丸いフックを軸に回転させ、固定しておけるのでルッコラのバカ力でもこじ開けられず大成功!
最強のフェンスが現れ、ちょっと残念そうなルッコラです。

 「滑りやすい床」の対処法

床は、無垢材のフローリングに自分たちで仕上げにワックス塗装を施しました。
設計段階で、犬の足腰に負担のない床材を考慮すべきか悩み、様々な床材を比較しました。
「ペット用建材」も候補に挙がりましたが、「これ!」と思うものがなく、床の滑りにくさはあまり重視せず、「肌に心地よい」「自然素材」「掃除がしやすい」といった希望を優先して無垢材のフローリングを選びました。

そして、シンプルですが、犬の通り道には一部でもよいので滑らないゾーンをつくることにしました。
犬がよく居るリビングやダイニング、そして特に滑って危なそうな階段下や食事スペースにも、部分的にマットを敷いてインテリアのアクセントにして楽しむことにしました。
これだけのことですが、案外彼らは自ら安全で快適なゾーンを足の裏から読み取ってうまく生活しています。

(左)よく駆け回るリビングはラグを敷いて対応 (右)よくいるダイニング窓際にもラグを

** 住まいの工夫ポイント **
犬の通り道に、ラグなどを敷いて滑らないゾーンをつくる。
インテリアのアクセントにもなり、一石二鳥!

 脱臭効果のある壁と天井

壁と天井は、ほぼ全面漆喰塗り仕上げにしました。
自然素材の漆喰は、塗り壁特有のざらついた仕上がりですが陰影があり美しいこと、また機能面でも調湿効果と脱臭効果があることが気に入り、採用しました。
また、引越し当初から「新築の臭い」=ビニールクロスや建材から発せられる接着剤の臭いが一切しなかったのは、嬉しい驚きでした。
臭いに関しては、猫のトイレ直後の強烈な臭いはどうしてもありますが、室内全体で計画した機械換気による空気の入れ替えと、この漆喰の脱臭効果で「においがいつまでもこもる」といった不快感が軽減されています。

** 住まいの工夫ポイント **
内装材に、機能的な天然素材をつかって、エコでクリーンな生活環境をつくる。

 住みながら変化する家

わが家は、決して「ペットのための住まい」ではありません。

設計段階でペットのために取り入れた工夫もありますが、一部は妥協し自分たちの好みを優先した点もあります。
結果的に良かったこともありますし、犬や猫のことを考えてこうすればよかったかと思う点もあります。
けれど、これからの自分たちの健康状態や生活スタイル、犬や猫の状況も年月とともに変わっていくものです。
それならばその都度、何かしら工夫をして改善していけば、それでよいのではないかと感じでいます。

最初から「こうであるべき」と構えて完璧を求めるよりも、変化を受け入れながら住まいに手を加えることで、犬と猫との暮らしを楽しみたいと思っているのかもしれません。

※1:「スキップフロア」とは一体となった空間の中に、床の段差によって中1階や中2階を設けて空間に広がりと有効的な活用をもたらす設計手法。

犬と猫との住まいの工夫
第1回 住宅密集地に建つ狭小住宅

遠藤昌子

遠藤昌子

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(えんどうまさこ)

犬と猫を愛する一級建築士
愛玩動物飼養管理士2級

設計事務所、大学助手勤務を経て2017年アトリエエンドウ一級建築士事務所設立。
暮らしにまつわる小さなプロダクトからインテリア、建築まで住まいのトータルデザインを目指して活動している。

アトリエエンドウ一級建築士事務所ホームページ:http://at-endo.com

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