アニマルライツ

鳥猟犬をたすけるために 第2回 CACIの人々

鳥猟犬をたすけるために

第2回 CACIの人々

    金子理絵 コンパニオンアニマルクラブ市川代表


スタッフについて

-スタッフは全員ボランティアなのでしょうか。-

みんなボランティアですね。

-スタッフの入れ替わりなどはたくさんありますか。-

 ありますね。やはり来てみると想像していたものとは違うと思うのではないでしょうか。仲間たちとワイワイ楽しくやりながら、一人一頭散歩につれて行って終わるような仕事を想像して手伝いに来てくださる方もいますが、正直言ってそんなに笑えるものではないんです。もし犬種が違えば、私たちの仕事内容も違ったんだろうとみんなでよく言っているのですが・・・。この犬種でなければ、もしかするとこんなに苦労はしなかったかもしれないなって思うこともあります。通常、鳥猟犬のなかでもミックス犬やラブラドールなどは自分達でもう飼っている人が多いし。家庭犬としてある程度育っている犬たちもたくさんいます。

 でも、この施設の鳥猟犬たちのひとつ違うところは今まで家庭犬として育ったことがないということです。そこで、私達は本当にずっとこの犬種をやり続けることができるだろうかという迷いもありましたが、どうしてもやり遂げなければいけないものでもあったんです。その思いがさまざまな方面にも伝わって、周りの訓練士の先生だったり、トレーナーの先生が来てくれたのではないかと思います。

―訓練士さんやトレーナーさん達はいつ頃からいらっしゃるのですか。-

山本先生 2007年度11月に千葉県千葉市の「ドッグスクールアイル」というドッグスクールの山本先生がたまたまインターネットを見て、私達が一頭目に保護したポインターを見つけてくださったんです。「自分にできることは、飼い主さんが決まったら飼い主さんといっしょにきて鳥猟犬の遊ばせ方や暮らし方、家庭犬としてのトレーニングをする技術を無償で提供することです」と、協力の諸手を挙げて下さりました。

 今まで、この活動をしてきて、「ただでつけてあげるよ、そういうことに協力するよ」って話をいただくことがあり、いろいろな訓練士の先生とお話をしてきましたし、そのお願いもしてきたんです。でも、たいていの訓練士さんは、やっぱりビジネスなんです。山本先生が本当に日本の訓練士業界を変えた第一人者ではないかと思います。自ら無償で時間と技術を提供し訓練してくださり、「その子が卒業できるようになるまでは何頭でも見ます」とおっしゃって下さいました。とてもありがたいことです。なにも私達がここで頑張ってできない訓練をしなくても、里親さんを見つければ、先生のところで無償で訓練を受けられる。しかも、その子が卒業できるようになるまでは面倒を見て下さるわけですから…。とにかく里親さんを早く見つけようと思っています。

 そこでまたある問題点ができたんです。ある程度の散歩の訓練は私でもできます。ところが、猟欲が強くなりすぎてしまった犬は、一歩外に出ることすらできません。猟欲が強くなりすぎているという表現はおかしいですが、たとえばリードをつけることすらできない犬もいます。センターから連れて来たときはおとなしいのですが、次の日になるとリードはつけられないし、すごい力で暴れてしまって・・・。その興奮状態を抑える術を知らないんです。とにかく山本先生が何度もいらしてくださって、興奮状態を抑える方法を教えてくださったり、ボランティアへの指導もしてくださいました。

 山本先生もお仕事として千葉で訓練士をしているので毎日ここにくるわけには行きません。トレーナーさんを含め、そういう技術をお持ちの先生が集まって下されば会として成り立つわけですが、現状はそうではありませんでした。

 そこで、CACIである程度外に連れ出して公園くらいまで散歩できるようにトレーニングし、そこから先のフィールドトレーニングや、呼び戻しの訓練、家庭でも少し落ち着きを維持させることや飼い主さんの教育を含めたすべてを山本先生にお願いする。このような役割分担をしっかり決めれば、先生にも自分の時間をうまく使ってもっともっと多くの子を見ていただくことができると思うようになりました。

 山本先生は鳥猟犬を専門に学ばれている訓練士でもあり、ご自身でも殺処分になるポインターを保護し家族に迎えられた経緯もあるんです。ついこの間も先生にずっとお世話になっていた私達の保護犬が、ドッグスクール「アイル」を卒業しました。本当に山本先生がいらっしゃるからやれることであって、今、鳥猟犬専門レスキューができるのも先生のおかげですね。私達だけでは技術もありません。とても難しいことだと実感しています。

―では、山本先生と出会うまではとても大変だったということですよね。-

 大きな問題が出るまでは、保護犬も良い子ばかりだったんですよ。たまたま連れてきた子がそんなに困る子ではなかったんです。その中でも一頭だけ猟欲が強い子がいて、自分ではどうにもならなくなって訓練所にだしましたが、いま考えてみると全然大変ではなかったと思います。私達も慣れてしまったのでしょうが、あれぐらいで訓練所にだしたのかといまは感じています。この程度の状態の犬であれば自分達でも訓練できると、判断できるようになるまで、私達も知らない間に技術が上がっていたり、身につけていたり。鳥猟犬という犬種にも慣れてきました。

 でも、特別に力が強いとか、猟欲がとても高いとか、猟に対する強い執着心があるといった、ちょっと難しい子については私達だけではまだ難しいです。ですので、ボランティアで散歩に行けるまでになったらあとは現在来てくださっているトレーナーの先生4人にお願いしています。それと同時に、先生達も私達に技術を教えてくださっているので、それにそって私達も犬に訓練していくんです。   

-4人のトレーナーさんはどのような方なのでしょうか。-

成田恵子先生 1人が、成田恵子先生です。ドッグトレーナーでもあるのですが、ワンちゃんのリンパの流れをよくするスウェーデン式マッサージのセラピストでもあります。

成田先生は、保護犬たちの緊張を取ってくださいます。
触られることになれるように、センターから来たばかりの子など注意深く見てくださっています。

星野先生

 星野先生はちょっとハイテンションになっている、要は全く落ち着きがなく、執着が他にいっていたり、猟欲が強い、いろいろな問題を抱えているワンちゃんの気持ちを、人間の方に向けてくれます。 つまり、まずは落ち着かせるところを犬たちに教えてくださっています。

太田智美 太田智美先生は「鳥じゃなくておもちゃの方が楽しいよ。」といった、方法をかえてこちらに向かせる、移行する、執着するものをかえていく、という訓練をします。その上手さから、私は太田先生を「犬と遊ぶ大天才」と思っています。ただ遊ばせるのではなく、犬に考えさせるんですね。猟犬というのは一歩外に出ると全然こちらを見ないし、声も聞かない、あっちの方向を見ています。それをこちらに向かせるという訓練をやってくださいます。太田先生も講演などで、鳥猟犬のリトレーニングについてなど、現在の鳥猟犬が置かれている現状を広めてくださっています。

金子理絵先生
 次に私と同姓同名の金子理絵先生がいて、太田先生と同じ係属です。

 みなさん話しを合わせて来てくれたわけではなく、別々のところからのお問い合わせや、ポスターの紙をちぎって持ってきて下さったりして集まったのに、それぞれの得意とする分野がかぶっていないんです。申し合わせたわけではないのに、先生方も個々の役割を果たしてくださっているように思います。

 それで、先生方もみんなとても仲がいいですし、私たちボランティアどうしもめたことも喧嘩したこともなく、仲がいい。仲がいいといっても友達ではなくて、協力しあって一つの目標に向かう仲間の関係です。みんな真面目で、話の内容は常に保護犬たちのことばかりを考えていますね。当番制なので、会えるときにはとことん真剣な話ばかりしています。

―そういう関係の方がある意味、長くうまくいきそうですね。-

 とにかくこの犬たちがここにいると、見ているところが一緒、つまりみんな犬たちを見て話しているんですよね。人間関係というのはその真ん中にあるものをはずすと、人対人なので、一個壊れるともう壊れてしまう。もう、付き合わなきゃいいんだから・・・みたいに。私たちはひとつ食い違ったとしてもこの子たちがいる限り、また修正できます。それを強く実感します。ここのところ、会の今後の方針などについて、ボランティアさんにも聞きたいことが山ほどあるんです。もしこういう風に言われたら、PTAなら絶対にすぐやめているよねと思うことでも、やめる人はいないんです。真剣に考えているから、でてくる不満だったり意見だったりするのかなと思えるのです。別に友達になりたいわけではなく、目的を達成する仲間でいる、同志でいるということですから。私自身は代表という名前はいただいていますが、みんなやることは一緒です。

 ただひとつだけ違うのは、里親希望者の方とお話をするのは私一人と決めていることです。そう決めていないと、スタッフそれぞれ価値観や里親様に対する意見が違いますから。里親様とのお見合いは私だけと決めさせていただいています。里親希望者のほうがシェルターに来てくださっているときにはボランティアも一緒にお茶をいただいたり、お話はします。

鳥猟犬をたすけるために
第1回 CACIの活動を始めるまで

鳥猟犬をたすけるために
第3回 「いのち」をめぐる多くの課題

金子理絵

金子理絵

投稿者の記事一覧

(かねこ りえ)

コンパニオンアニマルクラブ市川代表

平成5年度より、千葉県市川市塩浜護岸沿いの捨て犬(三番瀬の犬達)をレスキュー。 平成20年度より千葉県動物愛護センター登録ボランティアとなりイングリッシュ・セッター、ポインターを主にレスキューをしている。
 職業は、歯科衛生士。
掲載:地元タウン紙に連載記事

コンパニオンアニマルクラブ市川ホームページ:http://cac-ichikawa.com/

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