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ペットの老後介護

 

ペットの老後介護

 

 


 昔、犬や猫の寿命は平均7歳~8歳くらいでした。しかし今や、動物医療の発達や栄養の改善などによって、13歳~15歳くらいになっており、ほぼ2倍に延びています。高齢化は人間のみならずペットの世界でも同様で、介護に関して多くの飼い主さんが老ペットの世話に大変な労を費やしている現状があります。今回はペット介護が必要になったときにどうすればよいか、また、健康で長生きできるように備える方法について考えます。

ペットが自力で動けなくなる日

 最初は仔犬、子猫だったペットたちも、いつかは老犬老猫になる時がやってきます。何度かペットを見送った経験のある人はある程度心の備えができているかもしれませんが、初めて飼う人は、ペットがだんだん年老いて病気になったり、自力で食事やトイレができなくなるといった将来はまだまだピンと来ないでしょうし、その時に備えるという発想はないかもしれません。

東京都国分寺市のオリーブ動物病院の有薗浩見院長に、患者さんのペット介護の相談や体験などについてお聞きしました。

「大抵は、ペットが年老いて、病気などで自力で動けなくなってから病院に来られ、治療を始めます。ただ、その段階ですでに食が細くなっています。ですから当院の経験では、老犬以外でも何らかの内臓系疾患によって寝たきりとなったペットの場合、人間のように何年にもわたる介護を飼い主さんがされるケースはなく、3カ月程度、長くても1年未満で亡くなっていきます。ただし、老いではなくケガや事故で身体が不自由になったような場合は、長期あるいは生涯介護にもなり得ます。」

寿命が延びて痴呆になるケースが増える

寝たきりになったときのおもな介護としては、トイレ、床ずれの世話、食事の介助です。床ずれは、犬猫は横向きにしか体制が変えられないため、1日最低3、4回ぐらいは動かしてあげる必要があり、市販の床ずれ防止シートなども役立つでしょう。

また、ペットの寿命が長くなったことで、痴呆になるケースも増えており、一番多い症状としては、昼夜逆転で夜鳴きすること。近所迷惑にもなり、長期間続くとさすがに飼い主さんの神経がまいってしまいます。どういった具体策があるのか、有薗先生にお尋ねしました。

「睡眠薬や睡眠導入剤を飲ませて、夜間には寝てもらうようにします。それで効果が薄い場合は、声帯切除をする方法があります。」

声帯切除はどういうものなのでしょうか。

「切除しても、犬は相変わらず吠えるのですが、ほとんど声は出ない状態になります。しかし、犬自身には吠えている感覚があるため、吠えられなくなったというストレスやその後の痛みなどはありません。最初はかわいそうだと躊躇していた飼い主さんから、悩まずもっと早くやっておけばよかったと言われることもあります。」

ペット介護施設やヘルパー、デイケアに預ける方法

 飼い主さんも高齢化することで、ペットの老々介護も問題となっています。身内に預けられる人がいる場合はよいですが、家族が少なく代わりに見てくれる人が誰もいない場合などのため、近年、ペット介護ヘルパーやデイケア、介護施設も全国に登場しています。

いくら自分で面倒を見てあげたくてもペットの介護に飼い主さんへの負荷がかかりすぎる場合や、一時的にも休みたい場合は、無理をせず外部の助けを借りる選択肢も今はあります。介護施設は地方から都内までありますが、両者の違いはまず料金。都内や都市部で高く、地方はかなり安く設定されています。都市部に預ける利点は、交通アクセスも良いし、自宅近郊であれば面会に行きやすいことです。逆に地方は面会には行きにくいですが、自然豊かな環境の中でドックランなども設けられ、広々とした敷地でペットが過ごせます。

入所に関しては各施設で、スタッフ常駐、終身預かり、寝たきり、認知症、病気、夜泣き、大型犬の受入れ等々の諸条件が挙げられています。ペットになかなか面会に行けなくても写真や手紙などでペットの様子を報告をしてくれるサービスを行っている施設もあります。

とにかく将来への病気予防が鍵

介護サービスや医療、補助グッズが充実してきたとはいえ、本当はなるべくそのお世話にならず、ペットには家で元気に長生きしてもらいたいもの。介護が必要になる前に、ペットを飼ったその日から心掛けるべきことは「将来の病気の予防」です。

将来の病気を避けるためにすべきことを、有薗先生にお聞きしました。

「基本的にはワクチン接種、ノミ・ダニ駆除、虫下し、誤飲誤食を避けることなどです。今は予防医学も進んでおり、ペットフードも年齢別や犬種別、ダイエットや各種疾患対応など目的別のものも市販されており、多岐にわたっていますので品質が良くてペットに最適なものを選ぶとよいでしょう。」

有薗先生は、ペットの最後についてこう語っています。

「当院で長年体験してきたことですが、ペットも飼い主さんを最後まで慕いながら死んでいくものです。たとえば、ペットの入院中、危篤になって、飼い主さんが面会にやって来てから、パタッと亡くなったり、割とそういうことが多いんです。」

長く一緒に暮らしたペットも、最後の時には飼い主さんとの別れを惜しみ、感謝の気持ちを伝え、飼い主さんに看取ってもらいたいと願っているのかもしれません。

取材協力:オリーブ動物病院(東京都国分寺市)http://www.olive-ah.com/index.htm


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