しつけ・ケア

ペットの心身の健康に主体的に関わる~ホリスティックケア~ 第6回 アニマルコミュニケーションの可能性

ペットの心身の健康に主体的に関わる
~ホリスティックケア~

第6回 アニマルコミュニケーションの可能性

    


 アニマルコミュニケーションをご存知でしょうか? 動物も人と同じように魂を持ち、日々いろいろなことを感じています。その気持ちを、言葉に置き換えて人に伝えるのがアニマルコミュニケーションです。「ご飯はおいしかった?」「何をして遊びたい?」など、動物と気軽なおしゃべりができたら楽しいですね。加えて、家族である動物の元気がないときに体調を確認することができたらありがたいと思いませんか? テレビに動物と話が出来るという女性が登場して以降、日本でも少しずつアニマルコミュニケーションという言葉を聞くことが増えましたが、まだまだ一般の認知度が高いとは言えません。しかし欧米の動物病院にはアニマルコミュニケーターが常駐しているところもあり、動物の気持ちを理解することで飼い主の迷いを解消したり、治療の選択に示唆を与えたりすることがあるといいます。

 東京都杉並区にあるブルーミントン動物病院はアニマルコミュニケーターと連携している、日本では珍しい動物病院です。今回はブルーミントン動物病院(http://bloomington-vet.com/)院長の岩井美知子先生と、そこでアニマルコミュニケーターとして活躍されている井上妙子さんにお話を伺いました。

‐いつ頃からアニマルコミュニケーション(以下AC)のお仕事をされているのですか?

井上:約5年前からです。モニターを募って経験を積むなどして、ブルーミントン動物病院でお仕事をするようになったのは約3年前です。

‐病院でACをはじめたきっかけはどのようなものでしたか?

井上:元々我が家の愛犬が診ていただいていました。難病だったのですが強い薬を使うのに抵抗があって、漢方などを積極的に取り入れているブルーミントン動物病院に通うようになったんです。たまたま待合室で診察を待っていたときに、患者さんのご家族が、亡くなった子を連れて病院に報告にいらして。待合室に掲示されていたたくさんの写真の中にそのご家族の写真を見つけ「あ、この写真の子だ」とわかった瞬間に「どうしてもお母さんと先生に伝えてほしいことがある」と話しかけられたんです。その感謝の思いを、そのまま院長先生にお伝えしたのがきっかけです。

‐突然のことで、院長先生はびっくりなさったのでは?

岩井:そのご家族とは治療を通じて非常に深い関わりがあって、伝えられた内容が全て納得のいくことだったので、びっくりはしましたけれど疑念の余地はありませんでした。ACについては多少の知識がありましたし、ACによってガラリと変わる動物を見る機会があって、自分の病院でもこういう手助けをしてくれる人がいたら…と漠然と考えているときに井上さんが現れて。「ああ、ついに現れた」(笑)と、むしろ喜ばしい思いでした。

井上:院長先生はそのとき、「自分が出来なくても、こういう人が来てくれるのね」と(笑)。突拍子もないことを言い出したのに、「一応承っておく」という態度ではなく、ちゃんと受け止めてくださったことが今日に繋がっていると思います。

‐その後すぐに病院でACを導入されたのですか?

岩井:その後に、大暴れの入院患者さん(佐藤キキちゃん・ヨ-キー・当時12歳)のケースがありました。点滴のチューブやケージのドアをかじり、ジッとしているのさえ難しい状態で。入院治療が必要なのは明らかだけれど、入院でかえってストレスを与えることになるのが心配だったので、井上さんを介してお話を聞きました。するとキキちゃん曰く「家に大事なものを忘れてきた。それを取りに家に帰らなければならない」と。井上さんによれば、大事なものは丸いものとのこと。ご家族はすぐに、それは体調を崩されているお母さまが、具合のいいときにキキちゃんと遊んでくれるボールだとわかりました。キキちゃんにとってそのボールが、大好きなお母様の体調のバロメーターであり、絆の象徴だったのです。井上さんを通して「治療して元気になったら、またお母さんのすぐそばで様子をみてあげられる」と伝え、ご家族にボールを持ってきていただくと、それ以降全く騒ぐことなく治療に協力してくれたのです。ビックリするような変わりようでした。これは患者さんにもそのご家族にも、納得して治療を受けていただく上で非常に有効だと感じたので、病院でACをしていただくようになったのです。

‐動物の気持ちはどのような形で井上さんに伝わってくるのですか?

井上:音として聞こえるのではなく、言葉が浮かぶことが多いです。映像のようなイメージが伝わってくることも。ただ、私にはトマトのように感じるけれど、実はリンゴだったとか(笑)そんな感じのズレはもちろんあります。一緒に暮らしている動物のことを一番よくご存知なのは飼い主さんですから、想像力を働かせてうまく受取っていただくのが大事です。例えばこんなことがありました。今までは問題なくトイレを使えていたのに、急に粗相するようになった子とお話をしたときのことです。その子は「トイレにオバケがいるから怖い」「オバケが耳の毛を引っ張る」と言うのです。言葉通りに受取ると「バカバカしい」とも思われがちですが、飼い主さんはその意味を考えて下さいました。結果、最近になってトイレそばの吸気口のふたを開けたことに思い当たりました。吸気口の風で耳が吸い込まれるように感じ、それをオバケと表現したのではないかと。すぐに吸気口のふたを閉めると、またトイレが使えるようになりました。「そんなはずはない」と思わずに飼い主さんが一緒に推理してくださることで、ACの結果がよりよいものになると思っています。

‐ACが治療の助けになると感じた印象的な事例があったら教えてください。

岩井:往診して皮下補液をしていた猫ちゃん(川口ももちゃん・雑種・当時16歳)の例です。遠方にお住まいだったので、毎回の往診は飼い主さんにも負担がかかります。家で飼い主さんが補液できれば一番なのですが、飼い主さんは躊躇していらっしゃる。モモちゃんも補液を拒否していて、しかも非常に頑なな態度でした。井上さんに話を聞いていただいたところ「お母さんが怖がっているから」と。補液をすればモモちゃんが元気でいられること、モモちゃんが元気になるためにお母さんも怖がらずに頑張るということ、補液の手順などを伝えたところ、モモちゃん自身が自宅で補液をすることを受け入れ、スムーズに治療が進むようになりました。

‐病院でACをすることの利点はどのようなものですか?

井上:治療を嫌がっていた動物が「なぜ治療が必要か」を理解して納得してくれることです。「何をされるの?」と怖がる子はたくさんいますが、話すことで、動物に余計な負担を与えずに済むのは大きな利点だと思います。飼い主さんと動物の絆はもちろんですが、獣医師と患者の関係もより良くなるのはACをするたびに感じることです。ただ、アニマルコミュニケーションは医学的診断ではありません。動物は痛みに強いですし、本能的に隠すということもあります。あくまでも自覚症状であり主訴であるということをご理解いただき、最終的な判断は獣医師と相談した上で飼い主さんがすることが大事だと思います。

岩井:病院を嫌がる子の場合、飼い主さんが病院に連れてくること自体に後ろめたさを感じることが少なくありません。でも、話をして動物に治療の必要性を知ってもらうことで、動物自身が納得して治療を受け入れてくれるようになれば、動物にかかるストレスも飼い主の罪悪感も同時に払拭されます。実際、食欲不振の子に無理やりご飯を食べさせるのはかわいそうと感じて躊躇していた飼い主さんがいました。動物に話を聞いてみたら、「自分では食べる気にならないけど、口に運んでもらえれば食べられるし、ありがたい」と感じていたのです。それがわかると飼い主さんも一生懸命食べさせようと努力するし、動物も「元気になるために」と頑張れる。皆でよい方向に向かって協力できます。私自身、普段から動物にたくさん話しかけるよう心がけていますが、ACの後は私の言葉をより的確に理解してくれていると感じます。

‐ブルーミントン動物病院の患者さんでなくても、ACを受けることが出来ますか?

岩井:はい、もちろんです。ACは病気の子だけでなく、健康な子が毎日幸せに暮らすために有効な手段です。話をすることで動物の気持ちや希望を知って日々の生活に生かすことが出来ますし、動物との関係がますます良くなると思いますよ。

井上:病院のHP(http://bloomington-vet.com/)で毎月の予定をお知らせしています。ACを体験することで動物と人間に境界などないことを知っていただきたいですし、ぜひお気軽にお試しください。動物は飼い主が話しかけることをよく聞いています。お話した後「ママはちゃんとわかってくれている」と言う子が多いんです。逆に、あまり話しかけられていない子はボキャブラリーが少なく、表現することが苦手な傾向があります。「どうせわからない」と思わず、是非、普段からたくさん話しかけてあげてくださいね。



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ブルーミントン動物病院
東京都杉並区西荻南2-22-11
http://bloomington-vet.com/

 

岩井先生プロフィール:
 東京都杉並区・ブルーミントン動物病院院長。日本獣医畜産大学(現・日本獣医生命科学大学)卒。現代西洋医学のみの治療に限界を感じ、従来の治療と合わせて、漢方や鍼灸、ホメオパシーなど身体全体をトータルで捉える代替医療を積極的に導入。 ドッグトレーニング教室やアニマルコミュニケーションなど、動物のQOLを高めるサービスの提供にも力を入れている。 愛猫はジェシー・トーマス・リリの3匹。


 

井上妙子さんプロフィール:
 東京都杉並区・ブルーミントン動物病院にてアニマルコミュニケーターとして活躍。啓示を受けるように「動物と話せるようになる」と宣言してアニマルコミュニケーションの勉強を開始。エリクソン催眠誘導講座初級~上級修了。レイキセカンドディグリー修了。ドルフィンスターテンプルミステリースクール国際認定ヒーラー FSP1、2、3修了。HANAn H&Aヒーリングセンター水土はなん氏に師事。愛犬はウェルシュ・コーギーのアルト(11歳)


 
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