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イヌに教え、教えられ 第11回 「大変」から「幸せ」に変わるとき

イヌに教え、教えられ

第11回 「大変」から「幸せ」に変わるとき


1歳のゴールデンレトリバー「ジョルノ」に飼い主さんは困っていた。
メスとはいえ、若くて元気な大型犬が散歩で引っ張るときの一瞬の素早さと力強さは馬力が違う。気を抜けば男性でも転びそうになる。元気な大型犬と毎日散歩をする大変さは飼ってみないと分からない。
ジョルノのママさんは散歩中に強く引っ張られ、訓練の必要性を感じてLessonを始めることにした。
 
イヌと人は、外見はもちろん、習性や本能・考え方など、違うところが沢山ある。
一方で、スワレ、フセ、マテ、オイデなど、イヌは私たちの言葉の指示で行動することを学習し、人の喜怒哀楽や雰囲気の変化を敏感に感じ取る。誉められると喜ぶし、叱れたとわかればしゅんとする。
イヌは他の動物に比べて、人とのやり取りをより密にできる。だから、言い聞かせれば止めてくれる、分かってくれると思うかもしれない。でも言葉で説明してもイヌには分からず、伝わってはいない。
イヌ達のなかには、特に躾などをしなくても家族が困らさない、家に迎えたときから「家庭犬」になれるイヌもいる。
しかし、一緒に住むだけ・飼うだけ・かわいがるだけではコミニケーションが不十分で吠える・引っ張る・興奮しすぎる・咬むなど、家族が困り果ててしまう仔もいる。
 
     イヌはしつけをして家庭犬になり、家族は勉強をして初めて飼い主になれる。
 
イヌの考え方や気持ち・本能を知り、愛犬を自らトレーニングする。時には、我慢することを教え、乗り越える喜びを体験させる。そのために誉め、ときに叱る。
家族自身が、愛犬をコントロールできるようにならないと意味がない。でもそれが難しい。
 
ジョルノとママがLessonを始めた最初の頃、ママがジョルノにうまく指示できないことが続いた。家事、家族の世話、仕事・・毎日沢山しなくてはならないことがある中で、ジョルノの散歩トレーニングを継続してやっていくことは簡単ではない。うまくできたり、出来なかったり・・それを繰り返しながら、少しづつハンドリングが自然にできるようになってきた。自ら指示し、誉める姿はママがジョルノの訓練士であり、リーダーであり、飼い主になってきた証拠。
「まだまだ全然ダメです~」ママはそう言うけれど、笑。
 
ある日、ジョルノのママからメールが届いた。
「ジョルノが来て大変と思うよりも、一緒で幸せと思えるようになりました」
「しっかりトレーニングをがんばって、ジョルノの友達ではなく、ただの愛犬家でもなく、リーダーとなれるように志します」
ジョルノに引っ張られて転び、膝を打ったり、顔が腫れたり、鋤骨にヒビが入ったことも・・でも、ママは諦めず投げ出さずに頑張り続けている。大変でも頑張ったからこそ感じられることがある。そう思った。
 
     「大変と思う」から「一緒にいて幸せ」に
 
飼い主さんに伝え、指導し、変えていくのは簡単なことではない。壁にぶつかることも日常茶飯事だ。イヌに教えるほうが楽だ~と思うこともよくある、笑。
飼い主は愛犬のしつけに苦労し、訓練士は飼い主の指導が苦労する、それが当たり前。だからこそ、こんな言葉をもらえたとき、格別に嬉しい。訓練士をやっていてこんな嬉しいことはないね。

2014年5月23日掲載

 

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里見 潤

里見 潤

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(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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