アニマルライツ

イヌに教え、教えられ 第5回イヌは人と人をくっつける

イヌに教え、教えられ

第5回 イヌは人と人をくっつける

    


 

「ヒューマン・アニマル・ボンド」という言葉があります。
 
「ボンド」とは「くっつける」という意味であり、直訳すると「人と動物の絆」つまり人と動物の間には深い絆や信頼関係、繋がりがあるという意味です。動物やイヌをペットとしてではなく「家族の一員」として迎える家庭も増えています。
僕自身この言葉にはイヌと人の絆だけでなく、実はもう一つの意味があるのではないかと感じています。

以前、訓練を担当した柴犬は家族を咬んでしまう仔でした。毎日のように本気で咬み、追い込まれていた家族にとって、その生活を続けることは咬まれる痛み以上に、精神的に辛い状況でした。
預かり訓練を終えての帰宅当初、咬まれることが数回ありました。しかし家族の頑張りがあり、咬まれることが無くなって、3週間。まだまだ油断は禁物ですが、適切な態度、運動、管理、接し方を続け、主従関係と信頼、絆を築きつつあります。
 
なかなかうまくいかない時期にママさんからいただいたメール。
 

「家族の気持ちがこの仔から離れてしまうことが心配です」
それが次第に変わっていき、
 
「この仔がいると心配することもあるけど笑うこともたくさん・・・」
つい先日のメールでは嬉しい報告を頂きました。
 
「家族四人と一匹で公園まで散歩に行きました。この仔がいると家族がまとまります」

 
イヌは家族間に会話を生み、家族の絆を深めてくれているのかなと思いました。
 
そして、この変化はこれだけではありませんでした。
住んでいるマンションの大家さん、お隣さん、向かいの戸建てに住む早起きのおじいさんとイヌの散歩中に話し掛けたり、掛けられたりするようになり、今ではイヌがいなくても会ったときには義務的と少し違う挨拶を交わすようになりました。
保護した犬を通して関わった里親さん達も多く、今でも交流があるご家族もいます。先日、イヌ連れで登った高尾山。登山中、沢山の人たちがいる中、私たちはとてもよく声を掛けられました。
 
イヌ(動物)が運んできてくれる人と人の出会いは沢山あります。
「ヒューマン・アニマル・ボンド」には、
「人と動物の絆」だけでなく、「イヌ(動物)が人と人をくっつける」
という意味が隠されていると私は思います。

2013年11月22日掲載

 

イヌに教え、教えられ 第4回
「叱る」ことが必要であり、「叱る」には愛情が必要である。

イヌに教え、教えられ
第6回 身近な人こそ褒めてみよう

里見 潤

里見 潤

投稿者の記事一覧

(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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