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イヌに教え、教えられ 第1回 犬は今を生きる。

イヌに教え、教えられ

第1回 犬は今を生きる。
里見 潤 (ドッグコーチ)
 

    



▲久しぶりに愛護センターを訪れた保護犬つとむ。
担当者や施設職員を見つけて撫でてもらい恍惚の表情。そこにあるのは、つとむの過ごした優しく楽しい時間。

僕は家庭犬のドッグトレーナーをする傍ら、家庭で飼われていたが捨てられ、もしくはブリーダーで繁殖をしていた犬が繁殖ができなくなり放棄され、行き場所が無くなった犬を預かり、新しい家族を見つける活動をしている。
保護犬を希望する家族には正式に迎えてもらう前の「お試し飼育」がある。これから10年近くを一緒に暮らしていけるかどうかを判断する大切な2週間です。
 
お試し飼育が始まると保護犬を迎える家族が気にすることがある。
  「前の家族を思い出して寂しがったりしないかな?」
  「預かってくれていた家族と同じようにできるかな?」
  「私たちや新しい家に慣れてくれるのかな?」・・・
 
人間は過去を思い出し、考えたり、比べたり、気になったりする。
あのときこうしておけば・・  もしこうだったら・・  そんな風に考えてしまうことがある。
だからこの仔もそうなのではないか・・・
 
だが犬の興味は「今」にある。
  今、ボール遊びがしたい。
  今、散歩に行きたい。
  今、テーブルの上の人のご飯が食べたい。
  今、あの犬と挨拶したい。
  今、楽しい。
  今、怖い、逃げたい。
  今、撫でてもらっているから気持ちいい・・・
とにかく「今」なのです。
 
新しい環境や初めての人に慣れ易い子もいれば、慣れるのに時間の掛かる子もいるから犬によって家族と環境に慣れるまで掛かる時間は違うが、必ず新しい家族を受け入れてくれる時が来ると経験から僕は思う。
 
新しい家族と保護犬に久しぶりに会うと、とたんに僕を思い出し、目一杯尻尾をブンブン振って歓迎してくれるが、別れれば引き出しは閉められ家族といる「今」を優先する犬。
それを見ていると犬は過去の経験、楽しいこと、嫌なことを覚えておく思い出の箱は持っているが、普段その引き出しは閉めているんだと僕は考えている。
犬は記憶を引き出して、今と比べたりしない。
 
犬は「今」を生きている。
 
気にしてしまう家族には、家族が気にして気持ちが沈んでいるとなぜ沈んでいるのかは犬には分からないけれどその気持ちを感じとるから、影響を受けてより距離ができてしまうこともある。家族から先に「今」を見るようにしないと駄目ですと伝えている。
 

過去や未来を気にせず、新しい生活、新しい家族に向き合う犬達を見ていると、あの時ああすればよかったと思い出したり、あれがうまくいかなったらどうしようと気になってしまうときに、いやいや自分も今に集中しなきゃと、犬が教えてくれる。

 
今僕が保護し、預かっているミックスのつとむは元々兄弟一緒に保護された。
保護先の動物愛護センターで1年間、触れ合い活動の犬として小学校に行き、子供達に犬の触り方や犬を知る課外授業の活動をしてきた後、僕が預かることになった仔。兄弟とはそのときから会っていないが、思い出す様子はなく、元気過ぎるぐらい。
遊び、食べ、寝て、撫でてもらうことだけで満足している。
今のつとむにとって僕といる生活が全てだが、新しい家族が決まればつとむにとって一緒にいる新しい家族が全てとなる。それでいい、それが犬なのだから。

イヌに教え、教えられ
第2回 伝えるために気持ちを出す

里見 潤

里見 潤

投稿者の記事一覧

(さとみ じゅん)

ドッグコーチ

1975年、横浜市生まれ。2004年、警察犬訓練校に入学、出張トレーニング会社を経て、保護活動団体「Dog shelter」の専属スタッフとして、保護犬のトレーニング、一時預かり家庭と里親家庭の間に入り、アフターフォローを担当する。
2012年7月より独立。出張、及び預託トレーニングを柱に活動する傍ら、保護犬の一時預かりを継続中。
 
日本警察犬協会公認訓練士
ジャパンケネルクラブ公認訓練士
東京都動物愛護推進員

 保護犬預かりを主に、トレーニングのことを書いている里見潤さんのブログ
 「イヌと歩けば。」http://setahachidog.blog.fc2.com

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