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被災地に残された犬と猫 ~東日本大震災、ちばわんの被災動物支援活動~ 第1回 ペット用品が足りない!

被災地に残された犬と猫
~東日本大震災、ちばわんの
 被災動物支援活動~

 第1回 ペット用品が足りない!

    


 東日本大震災から1年以上が経ちました。この震災で被災したのは、人間だけではありません。犬や猫など、飼い主と離ればなれになってしまったペットが多くいます。そのような被災動物たちを救うために、震災後から今日まで、多くのボランティアが活動してきました。以前GORONで紹介した「ちばわん」も、被災動物支援のために立ち上がった団体の1つです。今回、「ちばわん」の代表である扇田佳代さんに被災動物支援活動についてお話を伺うことで、私たちが知らなかった、被災動物の実態や現状が見えてきました。

「ちばわん」の普段の活動についてはこちらの記事をご覧ください。

 

はじめはペット用品の支援から

――ちばわんさんでは、どのような被災動物支援活動をしてきたのですか。
 震災があってから1~2か月の間は、避難所にいる方や、現地の個人ボランティアさんに、直接支援物資を届けたりしていました。その後は、保護された犬猫を預かってくれるボランティアさんと動物たちとの仲介や、犬猫への手術やワクチン接種をおもに行っています。
最初は、群馬県みなかみ町の観光協会さんのお手伝いから始まりました。

――なぜ みなかみ町だったのですか。
 実は、みなかみ町観光協会の関係者さんの中に、ちばわんから卒業していった犬のいぬ親さんがいらっしゃるんです。その方を通じて、「みなかみ町で被災者の方を旅館やホテルに受け入れる際に、ペットといっしょに避難されてきた方も同伴できるようにしたい」というご相談を、ちばわんにいただいたことがきっかけです。

――ペットを受け入れたくても、ほとんどの宿泊施設では、そのための設備って整っていないですもんね。
 どこも一般的な宿泊施設ですから、ペットを直接客室に放しておくわけにはいきませんし、もちろん、ペットフードの備蓄もありません。それを、「物資」というかたちで支援することにしたんです。

「被災動物救援プロジェクト@みなかみ町観光協会」
http://minakami12.blog60.fc2.com/

想像以上の反響

――物資の受け入れからお届けまでの様子を教えてください。
 まずは、支援物資の内容や送り先について、ちばわんにお問い合わせをいただきます。はじめは観光協会さんでも支援物資の受け入れ対応が行われていたのですが、あちらが被災者の受け入れの手続きなどでお忙しくなってきたこともあり、途中から、みなかみ町への支援物資の受け付けは、ちばわんで一括して請け負っていました。
 そうして、ちばわんのスタッフの家に届けていただいた支援物資を仕分けして、みなかみ町に宅配便で届けました。
 支援物資の受け付けを開始してから、10日足らずで物資の受け付けを休止することになるくらい、大きな反響をいただくことができて、ビックリしました。

――被災地現地への物資支援はいつ頃から始めたのですか。
 2011年3月28日に物資の募集を開始しました。みなかみ町への物資募集のちょうど一週間後になりますね。「4月2日に第一陣が被災地へ出発」という弾丸スケジュールだったにも関わらず、みなかみ町への支援と同様、部屋がいっぱいになるくらい、たくさんの物資を届けていただきました。
 第一陣出発後も、連日にわたり、多くの支援物資が届けられたのですが、宅配便のドライバーさんが「たくさん集まってよかったですね」「きっと喜ばれますよ」と声をかけてくださったのが嬉しかったです。

――物資は避難所にお届けしたのでしょうか。
 第二陣以降は避難所にも届けに行きましたが、第一陣のときは、震災以前から地元で活動している動物愛護団体さんと、個人ボランティアの方に届けてきました。具体的には、団体は「アニマルピース」さんと、「ハートtoハート」さんで、あとは個人ボランティアさんのご家庭が2か所です。
 第二陣より後では、3班に分かれて宮城県や福島県、茨城県などの避難所を回り、ペット同伴の方がいらっしゃったら、ペット用品をお渡しする……といったかたちで、支援物資をお届けしていました。

 このように多くのペット用品や支援物資をいただいたおかげで、たくさんの飼い主さんと動物たちが救われたと思います。ご協力いただいたみなさんには、本当に、心からお礼を言いたいです。

 震災直後の混乱の中でも、「ペットたちも助けなければ」と気づけたのは、日常的に動物とかかわっている方々だからこそ。そうしてアクションを起こした人びとの力によって、多くのペットとそのご家族が支えられてきました。みなかみ町の例では、客室に直には入れないために、車などで待機していて飼い主さんと離ればなれだったペットたちが、ケージやペットシーツが支援として届いたことで、飼い主さんと一緒に暮らせるようになったそうです。ペットと飼い主さんがそばにいられたことで、ペットにとっても、飼い主さんにとっても、幾分か不安がやわらいだのではないでしょうか。

 次回は、被災後、現地に取り残された犬猫の保護活動についてお話を伺います。

「ちばわん」 http://www.chibawan.net/

「届け!被災地の犬や猫たちへ!(ちばわん支援ブログ)」
http://wannyanaid.exblog.jp/

被災地に残された犬と猫 ~東日本大震災、ちばわんの被災動物支援活動~ 第2回 被災動物の「預かりボランティア」

扇田桂代

扇田桂代

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(おうぎだ かよ)

ちばわん代表

動物愛護団体「ちばわん」(2002年設立)代表。1975年生まれ。法律事務所勤務。 
千葉県内の多頭飼育現場レスキューから、犬猫の保護活動に本格的に関わるようになる。現在関東全域に散らばるボランティアの協力の下、「殺処分ゼロ」を目指し主に千葉県動物愛護センターから引き出した犬猫の新しい飼い主を探す活動を続けている。

ちばわんホームページ:http://chibawan.net/

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